は氷がなくなっている。もし、本当に地球が冷えたものだとすると、前の四回の氷河期ののち、氷が融けた[#「融けた」は底本では「触けた」]ことが、ふしぎである。まあ、そんなわけで、地殻の変動のために氷河期が来るという学説は、すこしおかしいところがある。要するに、自分たちの考えでは、現在活発なる活動をつづけている世界的噴火が、今後勢いを減ずることなく、このまま、百年も二百年もつづくのでなければ、氷河期は決してやってこないであろうと思う」
これが、四人の権威者から得た結論の綜合であった。
それを聞いたとき、総監は、なるほどと感心し、そして安堵したのであった。このうえは、北見老博士を精神病者として、どこかの病院に収容すれば、それでこの問題は解決するであろう。もちろん氷河期は、決して来るまいと、そのときは考えたのであった。
ところが、それからこっちへ、一カ月の日が流れ、その間、総監は帝都の治安に文字どおり寝食を忘れて努力していたが、昨日、思いがけなく、総監は、北見博士の娘であるという北見氷子女史の訪問をうけたのである。
氷子女史は、ハンドバッグの中から、一枚の用箋を出して、これが父からの用事
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