けて、珠子がそれを望んでいることを明らかにしてやったら、それはもういわなくなった。その代りに、今度は珠子を非難し、君の脚を売ることを望むような女性は外面《がいめん》如《にょ》菩薩《ぼさつ》内心《ないしん》如《にょ》夜叉《やしゃ》だといって罵倒《ばとう》した。そればかりか、近き将来、珠子さんはきっと君を裏切って離れて行くに違いないなどと、甚だ不吉な言辞《げんじ》を弄《ろう》して、私を極度に不愉快にさせた。私は彼に対し、直ちに出ていってくれといったが、そんなことで立上るような彼鳴海ではなかった。そして今度は攻撃の目標を変え、和歌宮先生の手術にけちをつけるようなことを並べ出した。
「僕は和歌宮某がどんな手術名人か知らぬが、手術の痕《あと》はやはり醜く残るんだろう。つまり接いだ痕は赤くひきつれたりなんかして、醜怪な瘢痕《はんこん》を残すのだろうが……」
私は強く首を左右に振った。
「君は素人のくせに、和歌宮師の手術の手際にけちをつけるなんてよろしくないよ。この十年間に外科手術は大発達を遂げた。そしてその第一は、今までのような醜い痕跡《こんせき》残存が完全に跡を絶ったことだ。だから顔面整形手術
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