大脳手術
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)脛《すね》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四十三|糎《センチ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)はんこ[#「はんこ」に傍点]を
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   美しき脛《すね》

 いちばん明るい窓の下で、毛脛《けずね》を撫でているところへ、例によって案内も乞《こ》わず、友人の鳴海三郎《なるみさぶろう》がぬっと入ってきた。
「よう」と、鳴海はいつもと同じおきまりの挨拶声《あいさつごえ》を出したあとで、「そうやって、君は何をしているんだ」と訊《き》いた。
「うん」
 と、私は生返事をしただけで、やっぱり前と同じ動作を続けていた。近頃すっかり脂肪《あぶら》のなくなったわが脛《すね》よ。すっかり瘠せてしまって、ふくらっ脛《はぎ》の太さなんか、威勢のよかったときの三分の一もありはしない。
「つまらん真似《まね》はしないがいいぜ」
 そういって鳴海は、私に向きあって胡坐《あぐら》をかいたが、すぐ立上って、部屋の隅から灰皿を見付けてきて、元の座にすわり直した。私は毛脛を引込めて、た
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