の如きものが、どんどん行われるようになったのだ。しかも和歌宮師の手術は、この点では当代に並ぶものがない。実際僕は先生のところで何十人、いや何百人もの手術者を見たが、痕跡らしいものを見付けたことは只の一度もない」
「ふうん、そうかね。まあ、それならそれとしてだ、太い脚の代りに細い脚を接《つ》いだときはどうなるのか。継ぎ目の皮には痕跡が残らないとしても、太い脚に細い脚をつければ当然そこのところが段になるではないか。そうなるとやっぱり醜くないことはないね」
「君は非常識だよ。美観を一つの条件とする現代の外科手術において、そんな段になるような手際の悪いことをすると思うかね。手術の前には、回転写真撮影器による精密な測定が行われ、それからブラウン管による積算設計がなされて接合後の脚全体が資材範囲内で純正楕円函数又は双曲線函数曲線をなすように選定される。従って接合部切口における断面積も算出されるわけだから、これらの数値によって不要なる贅肉《ぜいにく》は揉み出して切開除去されるのだ。だから股《もも》と移植すべき脚との接合部はぴたりと合う。醜い段などは絶対に起り得ない。分ったかね」
「ふん、理屈は分った
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