―それを撫でるともなしに撫で始めたが、侘しさが一層加わるばかりであった。この脚は、美しくてすらりと長かった私の前の脛とは全く異り、皮膚がいやにがさがさし、悪性のおできの跡が、梅干を突込んだような凹《くぼ》みを見せてそれが三つもあり、おまけに骨が醜くねじれていた。なおその上に良くないことに、今だにちょいちょい悪性のおできがふき出し、我慢のならぬ臭気を放つのであった。たった五千円ばかりのものだったから今になって贅沢《ぜいたく》をいえた義理ではないけれど、こうも悩まされるものと知ったなら、青春の方をもうすこし値段をねぎって、人並な脚を買うんだった。金さえあるなら今から良い脚を買い直してもいいのだけれど、残念ながら珠子との遊覧の旅にすっかり使い切って、実をいえば目下金策をあれやこれやと考慮中であるわけだ。
私が、この厄介な脛に膏薬《こうやく》を貼りかえているところへ、めずらしく鳴海が入ってきた。
「よう闇川。やっぱり帰って来たんだね」
鳴海はそういって、いつものように灰皿を探しあてると、それを持って私の前に胡坐《あぐら》をかいた。私は周章《あわ》てて彼を叱り飛ばした。この第二世の脚を彼に見
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