してきたと褒めた。
それから私達は、ヨットに乗って、瀬戸内海の遊覧列島へ出発した。
幸福な、そして豪華な生活に、私たちは暦《こよみ》を忘れて遊び廻った。が、このような生活もいつしか飽《あ》きを覚える時が来た。勘定してみると、丁度《ちょうど》三ヶ月の月日が経っていた。そこで私達はどっちからいい出すともなくそれをいい出してこの島を離れ、元の古巣である都会へ引返した。
私は珠子と同棲するために新しい住居《すまい》を見つけるつもりでいたところ、珠子はそれに反対だった。同棲するには準備もいることだし、旧居を片付けるためにも時間を要するから、大体あと五週間の余裕を置いてくださらないと訴えた。私は、五週間はちょっと永すぎると思ったが、折角《せっかく》珠子のいうことだし、それでよろしいと承知した。私達は、停車場の前で左右へ別れた。そしてそれ以来今日まで約二週間、私は珠子に会わないのである。
私としては、同棲はしないまでも、私が珠子を訪問することは彼女の歓迎するところであろうと思ったので、停車場前で別れたその翌日には、彼女を美蘭寮《びらんりょう》に訪ねたのであった。ところが、寮はあったが、彼女は
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