るだろう」
と鳴海は皮肉をいう。私はそれに構《かま》わず言った。
「もはや現代の医術は天才的特技ではなくなった。それは普遍性ある機械的技術となり、機械力によりさえすれば誰にも取扱えるものとなりつつある。わが和歌宮先生の特技と称せらるるものも実は先生が把握した真理を大胆率直に機械的技術に移し、これを駆使するのに外ならない」
「そういっちまえば、君の崇拝する和歌宮師は、魔術師の一種だてぇことになる。とにかく君は即時即刻あのような人物との関係を清算せにゃならんのだ。切に忠告する」
「何をいうか。僕のことは僕が決めるんだ」
余計なおせっかいをする鳴海を、とうとう追出すようにして帰って貰い、私はそれからすぐさま迎春館へ行って両脚を売却した。こうしてしまえば、いくら鳴海だってもううるさいことはいえないのだ。なお私は両脚の代償として、予《か》ねて珠子から望まれていたとおりの五ヶ年若き青春と代りの脚一組とを購《あがな》い、その場で移植して貰った。
疑惑
珠子は、果して大悦《おおよろこ》びだった。私の予期した以上の悦び方だった。私の両手を握って見較《みくら》べ、以前よりも艶々《つやつや》
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