嬢も、どうかしているな。今日は十五日であるのを、十六日といいまちがえた。近頃の若い者は、熱心が足りない」
「老師、今日は十六日ですよ。余の腹心の部下からの報告があったから、まちがいなしですわ」
「そんなことはない。醤どのは、算術を忘れてしまわれたか。十四日の次は十五日であるが、決して十六日ではない」
「いや、老師、私たちは、一日|余計《よけい》に睡ったのですよ。部下の報告から推《お》して考えると、金博士を睡らせる睡眠瓦斯《すいみんガス》が、余と老師とにも作用した結果です」
「そんなことはない」
「いや、そうです。われわれ二人は、金博士が睡ったかどうかをみるために、うっかり金博士の部屋に入ったではありませんか、あのときあの部屋に残っていた睡眠瓦斯を、われわれが吸いこんだのです。そして足かけ二日間に亘りばかばかしく睡りこんだ……」
「ああ、そうか。いや、それにしても四十幾時間も睡るわけがない。わしの調合《ちょうごう》によれば、せいぜい前後十時間ぐらいは睡るように薬の濃度《のうど》を決めたつもりじゃったが……」
「しかし結果は、このとおり四十二時間も効《き》いたのです。ねえ、王老師、失礼なが
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