ですぞ。昨夜は失敗しましたが、今日は十分に駆使《くし》して、金博士を綺麗に始末していただきたい。大丈夫でしょうな」
「商売熱心なるその言葉、恐れ入ったぞ。今日こそは、始末機関をフルに働かして、邪弟《じゃてい》金の奴を片づけてしまうであろう」
「いや、その御言葉で、余は安堵《あんど》しました。さあ、後は十分おくつろぎ下さい。ボーイを呼びましょう」
 醤は、ベッドの上に半身をねじって、枕許《まくらもと》の押釦《おしボタン》を押した。すると枕許のスタンドが、ふっと消えた。
「おや、これはボーイを呼ぶ押釦じゃなかったか」
 醤は、しまったという表情で、今度は壁からぶら下っている釦を押した。すると、とたんにがらがらというしたたかな雑音が聞え、続いてアナウンサー鶯嬢《おうじょう》の声で、
「……今日十六日の天気予報を申上げます。今日は一日中晴天が続きましょうから、空襲警報に御注意下さい。明日はまた天気は下《くだ》り模様《もよう》となり――」
 醤は、ふうッと猫のような叫び声を出して、部屋の隅のラジオ受信機のところまでいってスイッチを切った。
 王老師は、あきれたような顔で、
「ああ、アナウンサー鶯
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