を咒《のろ》うことについて趣味のある醤買石《しょうかいせき》と、彼にうまく担《かつ》がれているとは知らぬ王老師《おうろうし》とは、医師の手当《てあて》の甲斐《かい》あって間もなく前後して、目を覚ました。
「人払いだ」
醤は、目が覚《さ》めるや、大声を発した。
居候《いそうろう》なりとはいえ、今を時めくABCDS株式国家のC支店長の号令である。それに愕《おどろ》いて医師は診察鞄をそこに忘れて立ち上ると、部屋附のボーイは、出かかった嚏《くさめ》を途中で停めて部屋を出た。
「ああ、王老師。どこへ行かれる」
「人払いじゃ」
「ああ、王老師はここに居て頂《いただ》かねばなりません。そうでないと、話が出来ません」
「するとわしは人の部類に入らない訳じゃな。やれやれ情けない」
老師は、無理やりにお臀《しり》に刺された睡眠解下剤《すいみんかいげざい》の注射のあとがまだ痛むので、すこし不機嫌であった。
「なに用じゃ、醤どの」
老師は、腰がだるくて仕方がないが、立ったままでものをいう。
「何よりもまず、余が依存《いぞん》いたすことは、老師の手腕と、この某国大使館における始末機関の偉力《いりょく》と
前へ
次へ
全24ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング