「どうも半端《はんぱ》な庭園じゃな。それにしても、王老師は、どうしていられるのか。おいおいボーイ君、王老師はまだこの大使館へ出勤せられないのか」
 金博士が、がなりつけるようにいうと、ひょっくり衝立からとびだしてきた給仕頭《きゅうじがしら》が、
「は。王老師は、当館にお泊り中でございますが、まだお目ざめになりませんので……」
「まだ目がおさめにならぬ。はて、年寄のくせにずいぶん寝坊でいらっしゃるな」
「はい。今までこんなことはなかったのでございますが、ふしぎなことで……。只今、医師が参りまして、診察をして居ります」
「診察? 老師は、睡りながら病気に罹《かか》られたのかね。ずいぶん御器用《ごきよう》じゃ」
「いや、そうじゃございません。あまり睡りすぎるというので、一同心配のあまり、医師をよびましてございます。それに醤買石《しょうかいせき》先生も、同様一昨日の夜以来、睡り込んでいられますので……」
「なんじゃ、醤買石?」
 博士の眼がぎょろぎょろと動いた。
「ははあ、読めたぞ。おい、王先生のところへ案内頼むぞ」
「は。ではこっちへどうぞ」
 金博士は、給仕頭の案内で、王老師の部屋を訪れた
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