賑《にぎや》かな音がしたかと思うと、その豆戦車はばらばらになり、やがてそのこまごました部分品や鋼鉄《こうてつ》がひとりでに集ってきて、三つのトランクと変ってしまった。重宝《ちょうほう》な機械もあったものである。
 博士は、そのトランクを、部屋の隅に重ねて積み上げた。
 それから、もみ手をしながら、扉を開けて、階下《した》へ下りていった。
 博士はずんずん食堂へ入っていった。
「おい、飯を喰わしてくれんか」
 食堂の衝立《ついたて》の蔭から、瞳の青い、体《からだ》の大きい給仕《きゅうじ》がとびだしてきたが、博士を見ると、直立不動の姿勢をとって、
「あ、王水険《おうすいけん》先生のお客さまでいらっしゃいましたね。では、只今|仕度《したく》をいたしますから、しばらくお待ちを……」
 といって、周章《あわ》てて衝立のかげに引込《ひっこ》んだ。
 金博士は、ぶうと鼻を鳴らして、窓ぎわに出た。広い庭園は、今は黄いろくなった芝生《しばふ》で蔽《おお》われ、ところどころに亭《あずまや》みたいなものがあるかと思うと、それに並んでタンクのようなものがあったり、なにか曰《いわ》くのありそうな庭園であった。

前へ 次へ
全24ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング