賑《にぎや》かな音がしたかと思うと、その豆戦車はばらばらになり、やがてそのこまごました部分品や鋼鉄《こうてつ》がひとりでに集ってきて、三つのトランクと変ってしまった。重宝《ちょうほう》な機械もあったものである。
博士は、そのトランクを、部屋の隅に重ねて積み上げた。
それから、もみ手をしながら、扉を開けて、階下《した》へ下りていった。
博士はずんずん食堂へ入っていった。
「おい、飯を喰わしてくれんか」
食堂の衝立《ついたて》の蔭から、瞳の青い、体《からだ》の大きい給仕《きゅうじ》がとびだしてきたが、博士を見ると、直立不動の姿勢をとって、
「あ、王水険《おうすいけん》先生のお客さまでいらっしゃいましたね。では、只今|仕度《したく》をいたしますから、しばらくお待ちを……」
といって、周章《あわ》てて衝立のかげに引込《ひっこ》んだ。
金博士は、ぶうと鼻を鳴らして、窓ぎわに出た。広い庭園は、今は黄いろくなった芝生《しばふ》で蔽《おお》われ、ところどころに亭《あずまや》みたいなものがあるかと思うと、それに並んでタンクのようなものがあったり、なにか曰《いわ》くのありそうな庭園であった。
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