最早《もはや》だめですぞ」
 醤は、老師に詰めよっている。
 老師は眉をあげ、卓子をどすんと打った。
「まあそう焦《あ》せるな。あの手この手と、まだやることはたくさんある」
「この上、金の奴に一分間でも余計に生きていられては、余《よ》の面目《めんもく》にかかわる」
「さわぐな。いよいよ今日は彼を貴賓《きひん》の間に入れることにしたから、こんどは大丈夫だ」
「ああ貴賓の間ですか。それは素敵だ。見たいですな、中の様子を……」
「見たいなら、見せるよ。こっちへ来なさい、テレビジョン器械をのぞけば、貴賓室の模様は、手にとるように分る」
「おお、それはいい」
 王老師に案内されて、醤はテレビジョン室に入った。高圧変圧器《こうあつへんあつき》がうーんと呻《うな》り、室内が真暗《まっくら》になると、ブラウン管の丸いお尻が蛍《ほたる》のように光りだして、やがてその上に、貴賓室の内部がありありとうつりだした。
「ほら見ろ。何も知らず、金博士のやつ、今入ってきたわ」
 博士は入口の扉をあけて、部屋の中へ入った。そして扉のハンドルを押して、扉をしめた。
 とたんに、高声器から、だだだだンと、はげしい機関銃の
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