いますが、それよりもすこし長くて九十五センチぐらいありました」
「それはたいへん。君に咬《か》みつかなかったか」
「すこしは咬みついたらしいですが、私は感じがにぶいのでねえ。ですが、脚だの腕だのにきりきり巻きついて歩くのに邪魔をしますので、癪《しゃく》にさわって、補えて来ました。ほらこれです」
 金博士は、ぬっと右手をさしだした。その手には、例の蛇が四五匹、ぶらりと下っていた。
「うわッ」
 王老師は、おどろいて、椅子に腰かけたまま、うんと呻《うな》って目をまわした。
「ああ、老師は蛇はお嫌《きら》いでしたか。これは失礼。では取り捨てましょう」
 と、博士は手にしていた蛇を、卓子《テーブル》の下へ、そっと捨てた。
 すると、卓子の下で、
「きゃッ」
 と、只ならぬ悲鳴が聞えたと思ったら、卓子が華々《はなばな》しく持ち上り、中から一人の真青《まっさお》な皮膚をもった人間がとびだしたかと思うと、衝立《ついたて》をぶっ倒して、料理場へ逃げこんでしまった。それこそ余人《よじん》ならず醤買石だったことは、今ここに改めて申すまでもなかろう。


     5


「王老師。あんな手ぬるいことでは、
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