れで相手が斃れないという法はないのじゃ。不思議という外《ほか》ない」
「ですが、わが部下の話では、その突撃隊の毒蛇が、金博士の腕と足とにきりきりと巻きついたのを双眼鏡でもって確《たしか》めたというとるですが、博士は別に痛そうな顔もせず、銅像のように厳然《げんぜん》と立っていたそうですぞ。本当に突撃隊ですかなあ」
「すぐとんでいってきりきり巻きつくところから見ても、それが突撃隊員だということが分る。その毒蛇が人語《じんご》を喋《しゃべ》ることが出来れば、もっと詳《くわ》しいことが分るのじゃが……」
話の最中に、醤の部下が、庭の方からあわただしく食堂の中にとびこんできた。
「委員長。たいへんです。金博士が、只今これへ現れます」
「え、こっちへ金博士が……」
「あ、あの足音がそうです」
ずしんずしんといやに底ひびきのする足音が聞える。醤は、泡《あわ》をくっているうちに、逃げ場を失い、またもや卓子《テーブル》の下にごそごそと匐《は》い込んだ。
卓子のシーツの裾《すそ》が、まだゆらゆら揺《ゆ》れている最中《さいちゅう》に、金博士がぬっと入って来た。どうしたわけか、金博士は、頭の上から肩のへ
前へ
次へ
全24ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング