るまいに、あははは」
「あははは。とにかくいって来よう」
艇夫の一人は出ていった。
あとで仲間の艇夫たちは、顔を見合わせ、
「ああはいったが、すこしは里心《さとごころ》がついているのじゃないかな。つまり、この噴行艇がこんど地球に戻るのは十五年後だから、昨夜生れたあの男の子供が、十五六歳にならなきゃ、わが児《こ》の手が握《にぎ》れないんだからなあ」
「うむ、まあ、そうだ。だが、そんな話はよそうや。こっちまでが、里心がつくからな」
十五年後だと、艇夫たちが話をしているところをみると、この噴行艇は、これからずいぶん長い行程をとびつづけるものらしい。
ふしぎな味噌汁《みそしる》
「どうだ、三郎。噴行艇に乗って、一ヶ月たったが、すこしは、気がおちついたか」
一人の艇夫が、煙草をくわえて、三郎の横に、腰をおろした。それは、三郎と同郷の、神戸《こうべ》生れの艇夫で、鳥原彦吉《とりはらひこきち》という男であった。彼は、やさしい男で、そして艇夫には似あわぬものしりだった。三郎は、彼を、ほんとうの兄のように思っていた。
「ええ、だいぶん、なれましたよ」
三郎は、缶詰の中から、青豆を
前へ
次へ
全115ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング