がら、彼らのいうことを、聞くとはなしに耳をかたむけた。
「……というわけなんだが、なんかいい名前を考えてくれよ」
「そうさなあ。そんなことはわけなしだい。チュウイチてえのはどうだ」
「チュウイチ? どんな字を書くのかね」
「宇宙の宙と、一二三の一よ。つまり宙一というわけだ。お前は、はじめて噴行艇にのって宇宙へのりだしたんだろう。だから、その留守《るす》に生れた子供に宙一とつけるのは、いいじゃないか」
「なるほど、宙一か。よい、いい名前だ。昨夜からおちつかなかったが、これでやっと、気がおちついたぞ」
 と、その艇夫は立ち上る。
「お前、どこへいくんだい」
「知れたことよ。これから無電室へいって、今すぐ家内《かない》のやつを、無電で呼びだしてもらって宙一という名をおしえてやるのさ。説明してやらなくちゃ、うちの家内は、あたまが悪いと来ているから、通じないよ」
「まあ、なんとでもするがいい。ついでに、うちの家内にことづけをして、お前の家内のところへ、子供の誕生の祝物をとどけるようにいってくれ」
「ばかなことをいうな。こっちから、さいそくをする――それではおかしいよ」
「遠慮するようながらでもあ
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