て、この月の上に、へんな生物がすんでいるなどといったんだね。わかっているよ」
 木曾少年が、急に三郎のことばをうたがいだした。
「あれ、クマちゃん。ぼくは君をおどかすようないじわるじゃないよ。なぜそんなことをいうんだい」
「だって、缶詰というものは、人間が発明したものじゃないか。月の先住生物が、人間と同じように缶詰を発明したとすると、あまりにふしぎだよ」
「このへんなしるしは……」
「そんなものは、符合だから、書こうと思えば人間にだってかけるよ。だから、この缶詰のからは、これまでに誰かこの月世界にとんできた地球人間の探険隊が、ここにすてていったものじゃないかと思う。きっとそうだよ」
 木曾少年は、この空き缶は、ずっと前に、この月世界へ探険に来た地球人間がすてていったのにちがいないという。
「そうかしら。ぼくには、そんな風には思えないんだがねえ」
 ここで、三郎と木曾との考えが、はっきりくいちがってしまった。二人は、なんだかちょっとさびしいような気もちになってだまってしまった。そして二人の足は、いつしか丘の方にむいていた。
 岩石のとぎたった光の丘をのぼるのに、案外骨が折れなかった。月の
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