上では、すべて歩行がらくであった。ちょっと岩のわれ目をぴょんととび越《こ》えるにしても、足に大した力を加えなくても、四五メートルはらくにとびこえられる。これは月の重力が、地球のそれに比べて、わずか六分の一という、たいへん小さいものであるからであった。
 三郎と木曾とは、いつの間にか丘の上にのぼりついた。あたりのながめは急にひらけ、下界は明るく、空は黒く林も川もない荒涼たる月の世界のすさまじさが、一層二人の胸にひしひしとせまるのであった。
 二人はこのすさまじい風景にのまれたようになって、無言のまま、しばらくそこに立ちつくしていた。
 それからしばらくして、三郎は、思わずこえを出して、さけんだ。
「おや、あそこに誰かいるぞ」
 彼はおどろいて、木曾の腕をつかんだ。


   甲虫《かぶとむし》か鳥か


「クマちゃん、あそこに誰かいるよ」
「誰かがいるって、誰がさ」
 木曾は問いかえした。
「ほらあそこだ。この丘の下の、大砲みたいに先のとがった岩の下だよ。かげになってくらいから、はっきりわからないが、ほら、丸い頭がうごいているじゃないか」
「丸い頭が……」
「ほら、日なたへ出てきた、先頭
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