こえがきこえる。
(風間三郎、おい、どうしたい)
 といっているのだが、触角がさわったときだけしか、こえがきこえないので、そんな風にきれぎれになるのだった。
 でも、ようやく二人の触角は、ぴったりふれあった。
「やあ、三郎。月の世界って、殺風景《さっぷうけい》だね。まるで墓場みたいじゃないか」
「それはそうさ。生物一ぴきいないところだからね」
「しかし、なにかめずらしいものがありそうなものだね。二人で、そのへんを、ぶらぶらしてみないか」
「ああ、いいよ。いまのうちに、ちょっと歩いてくるか」
「さあ、いこう。あそこに見えるすこし高い丘のうえまでいってみよう」
 二人は歩きだした。すると、いやにぴょんぴょんと、三段とびをしているように歩けるのであった。
「どうもへんだね。地球の上の歩き心地と、ぜんぜんちがうね」
「これはおもしろいや。歩いているつもりだけれど、ふわりふわりと、とんでいるような感じだね」
 二人は、おもしろがって歩いていった。
 そのうちに、どうしたわけか、木曾少年がぴったりと足をとどめた。前かがみになって、下をみているのであった。
「どうした、クマちゃん」
 三郎は、木曾少
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