。そこの窓から、下をのぞいてみるがいい。これから着陸しようとする月の陸地が見えているよ。しかし、おどろかないがいいぞ」
 と、丸い窓を指さして、艇長はいった。


   月の引力


(おどろいては、いけない)
 艇長は、そういったが、三郎はそんなにいちいちおどろいていてはしようがないと思った。なに、おどろくものか、と度胸《どきょう》をすえて、窓から下を見おろした。
「あっ!」
 だが、やっぱり三郎はおどろきのこえをあげた。なんという怪奇な月世界の風景であろう。
 飛んでいく噴行艇の下は、まっくらであったが、それからずっと向こうの方を見ると、これはまたまぶしいまでに光る銀色の大きな陸地があった。
 よく見ると、その光る陸地は、けわしい山々が肩をならべて、そびえている。山の端《はし》が光って、その後は墨《すみ》でぬりつぶしたように、まっ黒な山脈が手前の方にあった。それより向こうの山脈は、全体がまぶしく光っていた。その間に、明るいひろびろとした原が見えていた。山脈の多くは、環《わ》のようにつらなって、まん中が低くおちこんでいた。まるで爆弾をおとしたあとのように見えた。
 光る陸地は、帯のよ
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