いよ」
 艇長が注意をした。
「ああ、そうそう。それをすっかりわすれていた」
 三郎は、やっと気がついた。そして彼の触角を、艇長の触角の方へもっていきながら、
「ええ、たいへん失礼ですが、艇長の触角にさわらせていただきます。あのう、艇長、今まできこえていた声が、急にきこえなくなったので、おどろいたのです」
 と、目をくるくるうごかしていうと、艇長の目が兜の中で笑って、
「さっき、わしが号令をかけて、窓をあけさせたのは知っているね」
「ええ、知っていますよ」
 三郎は、自分の触角を艇長の触角からはずすまいと、一生けんめいに首をつきだしている。首の骨がいたい。
「窓をあけると、わが噴行艇の中の空気は、一せいに外へながれだして、艇内に空気がなくなったのだ。音は空気の波だから、空気がなくなれば、音は急にきこえなくなったのだ。それくらいのことは、お前にもわかるじゃろう」
「ははあ、なるほど」
 噴行艇のそとには、空気がすこしもないのである。だから窓をあけると、空気はどっと外へにげて、ひろがってしまったのである。音がきこえなくなったのは、このわけであるか。三郎はそのわけがやっとのみこめた。
「艇夫
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