をほめた。
「ちょっと、おたずねしますが……」
とつぜん叫んだのは、三郎であった。
「何ですか、君の質問は……」
三郎は、ちょっとあかい顔になって、
「どうも、心配なことがあるので、おききしますが、この宇宙服を着ている間は、何にもたべられないし、何にものめないのですか」
と、たずねた。月の世界を歩きまわっているのはいいが、そのうちに、のどがかわき、腹がへって、その場に行きだおれになってはたいへんだと思ったのである。
「ああ、飲食装置のことだね。それは、今説明するのを忘れていた。失敬《しっけい》失敬」
と、説明者は、にが笑いをして、
「飲食物は、兜の中に入っています。そして、左の腕に三つの釦《ボタン》がついているでしょう。その三つの釦には、水、肉、薬と書いてある。水の釦を押すと、水が兜の中へ出ます。ちょうど口の前に管の出口があってそこから出るのです。だから口をあいていれば、うまく口の中へ入る。どうです、うまい仕掛けでしょう」
と、説明者は、自分が発明者であるかのように、得意になっていった。
「……肉と書いてある釦を押すと、同じ管の出口から肉がとび出します。これはかたい肉ではなく
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