、煮《に》たものをひき肉にしてあって、おまけに味もつけてあります。それから薬と書いてある釦からは、ねり薬がとびだします。これは野菜を精製したもので、やはり糊《のり》のようになっていますから、たべやすい。この水と肉と薬の三つを、すこしずつたべていれば充分活動ができるのです。わかりましたか」
「なぜ、おべんとうをもっていって、手でつかんで口からたべないのですか」
 三郎は、質問をした。
 すると説明者は、ぷっとふきだした。
「じょうだんじゃない。兜をかぶっているから、たべられませんよ。だから、おべんとうを下げていっても、むだです。――みなさん、釦に気をつけてくださいよ」


   着陸命令


 三郎たちは、その場で、宇宙服を配給され、それを着た。
 金属で出来た鎧《よろい》や兜《かぶと》は、見たところ、ずいぶん重そうであったが、身体につけてみると、思いのほか、そう重くはなかった。なかなかいい軽合金で作ってあるものと見える。
 さて、宇宙服を皆が着てしまったところは、実に異様な光景であった。なんだか銀色の芋虫《いもむし》の化け物に足が生え、両足で立って、さわいでいるとしか見えなかった。

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