、背中に酸素のタンクを背負っている姿を考えると、ちょっとおかしい。
「おい、艇夫。もう外に、心配なことはないかねえ」
艇長は、からになったコーヒー茶碗を、三郎にかえしながら、たずねた。
「いきをすることが、うまく出来るなら、もう心配はありません」
三郎は、そう思っていたので、そのとおり返事をした。すると艇長はにやにや笑いだした。
「艇夫、お前は、月の世界へいってから、ずいぶん意外な思いをするにちがいない。今からたのしみにしておきなさい」
「なぜですか、艇長。意外なことというと、どんなことですか」
「まあ、今はいわないで置こう。とにかく、お前たちが月の上に安全に降りられるようにと、ちゃんとりっぱな宇宙服が用意してあるから、安心をしていい。それを着て、月の上を歩いてみるのだねえ。きっと目をまるくするにちがいない。まあ、後のおたのしみだ」
「そうですか。早くその宇宙服を着てみたいですね」
「そのうちに、宇宙服の着方を、だれかがおしえてくれるだろう」
艇長と三郎とが、そんな話をしているうちに、またまた艇長のところへ、報告がどんどんあつまってきた。機関部からも、機体部からも、航空部からも、
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