月の表面の、あのおそろしいほどあれはてた穴だらけの土地! その月の上に着陸するときいては、三郎少年の胸は、あやしくおどるのだった。
「艇長。月の上へ着陸できるんですか」
三郎は、辻中佐に、たずねないではいられなかった。
「それは出来る。なかなかむつかしいが、出来ることは出来る。わしは一度だけだが、月の上へ降りたことがある」
さすがに艇長だけあって、辻中佐は、月の上に降りたことがあるという。三郎は、それをきいて、まず安心したが、しかしどうして月の上に降りられるのか、またどうして月の上で、人間がいきをしていられるのか、ふしぎでならなかった。
「艇長。月の上には空気がありませんね。すると人間は、呼吸《いき》ができないではありませんか」
「それはわけのない話だ。酸素吸入をやればよろしい。われわれも現に噴行艇の中で、こうして酸素吸入をしながら安全に宇宙をとんでいるではないか。だから、月の上に降りれば、一人一人が酸素吸入をやればいいのだよ」
「なるほど、そうですか。じやあ、一人一人が、酸素のタンクを背負うのですね」
「まあ、そうだよ」
三郎少年は、やっとわかったような気がした。月の上へ降りて
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