ていって、停《と》めようとしても停まらないそうである。
(早く、五分間たってくれますように。そして重力装置が、一刻も早くなおりますように!)
と、三郎が念じていると、ちょうどその目の前のコーヒー沸しから、妙なものが這《は》いだしてくるではないか。
「あっ、なんだろう、あれは……」
茶色の飴《あめ》ん棒《ぼう》みたいなものが、コーヒー沸しの口から、にゅーっと横にのびてくる。それは箸《はし》ぐらいの長さになり、それから更にのびて、先生の鞭《むち》ぐらいの大きさにのびた。
「おやおや、たいへんなことになったぞ。一体、あれは何だろうな」
そのうちに、その茶っぽい棒が、ふらふらしながら、室内をおどるように、うごきだした。しかも、ますます長くなっていく。
三郎は、すっかりきもをつぶしてしまったが、ようやくこのときになって、あれは重力をうしなったコーヒーが外へ流れだしたのだと気がついた。
つまり、コーヒー沸しの中では、圧力のつよい蒸気ができて、その圧力でもって、コーヒーの液を口から外へ押しだしたのである。それにはずみがついて、いつまでも、コーヒーは長い棒になって出てきてやまないのであった。
前へ
次へ
全115ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング