力装置の故障なんだ!
前にも、ちょっと説明したが、宇宙へいくに従い、重力がなくなる。この噴行艇の中にいる乗組員たちは、重力がなくなると、勝手がちがって、働きにくくなる。それでは困るから、わざわざ器械をまわして、この艇内だけに特に重力を起してあるのである。その重力装置が、故障になったという知らせである。道理で、ゴム風船が、天井へ上ったきり、落ちてこないわけだ。
(だが、さあたいへんだ!)
三郎は、急にいそがしくなった。重力装置が故障になると、室内の物品が、それぞれひとり歩きをはじめる。そしてとんでもない勝手なところへいってしまうので、ゆだんがならない。
三郎は、椅子から下りて、身がまえた。身がまえたといっても、風呂《ふろ》の中で立ち泳ぎをしているときのように、おかしいほど、お尻がふわりと浮きあがる気持だった。 三郎は、両手で膝頭《ひざがしら》をつかんで、角力《すもう》をするときのように、しやがもうとしたが、膝頭が、いやに重いような感じだった。
こういうときには、なるべく身体のどこへも力を入れないのがいいと聞いていた。へんなところへ力を入れると、身体がとんでもない方向へゆらゆら走っ
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