元気に、弾丸のようにとんでいって、艇長室の前へいって、直立不動の姿勢をとった。
噴行艇の中は、ずいぶん規律がきびしかった。作業中は身がるいときは、どんなときでも、駈《か》け足ときまっていた。ちょうど、帝国海軍の水兵さんと同じようであった。これはできるだけ敏捷《びんしょう》に身体をうごかす訓練のためと、もう一つは運動不足にならないためであった。すこしぐらい気持のわるい日でも、号令《ごうれい》をかけられて、艇内をあっちへこっちへ、二三度かけまわると、妙に元気をとりもどす。
艇長室の前には、一人の少年が立って、風間の来るのを待っていた。それは、木曾九万一《きそくまいち》という、またの名、クマちゃんでとおっている、身体の大きな腕ぷしのつよい少年であった。
風間三郎と、このクマちゃんこと、木曾九万一とは、大の仲よしであった。そこへかけてきた風間少年を見て、木曾は、にんまりと笑ったが、すぐまたもとのいかめしい顔になって、姿勢を正した。
その間に風間が、気をつけをして立った。
「艇長室|附《つき》の艇夫交替」
と、クマちゃんが叫んだ。
「艇長室附の艇夫交替」
と、風間三郎が、反復していっ
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