身体はすっかり重心をうしなっていた。そして次の瞬間には、二人は宇宙服を着たまま、丘のうえから、ごろんごろん下へころげおちはじめた。下には、例の怪物団が日なたぼっこしているのだった。二人はその前へ……。


   怪物の訊問《じんもん》


 ゆるやかに、ごろんごろんと落ちていったので、二人はべつにけがをするようなこともなかった。そして三分の二ばかりころげおちた途中で気がついて、三郎は岩かどにつかまって、おちていく自分の身体を支えたのであった。
「おい、クマちゃん。岩にしがみつけ」
 とさけんだが、この三郎のこえは、もちろん木曾にとどくはずがなかった。そして木曾は、あいかわらずごろんごろんところがって、御丁寧《ごていねい》にも、怪物団の足もとまでころげおちて、やっとそこへからだは停まった。
「ちぇっ、まずいことをやったなあ」
 怪物団の方では、気がついて、さわぎはじめた。木曾は、たちまち彼等のためにとりおさえられるし、三郎も、木曾をたすけようか、それとも報告のためにこのまま引きかえそうかと考えているうちに、いつのまにか彼等のため、とりかこまれてしまった。
 二人は、やがて怪物団の前に、引きすえられた。さあ、つつき殺されるか、生き血をすわれるのか。三郎は、もう死を観念して、どうでもなれと、大きな眼をむいて、相手をにらみつけていた。
 怪物たちは、岩かどにこしをおろし、二人を見すえながら、頭をよせて何か話をしている様子であったが、もちろん怪物たちのこえは一向《いっこう》にきこえない。
 三郎は、この間に、怪物のすがたを、くわしく見ることができた。
 とおくから見ると、この怪物は、甲虫《かぶとむし》かペンギン鳥のように思われたが、そば近く見ると、かならずしもそうではなかった。甲虫やペンギン鳥よりもずっと高等な動物のように見えた。というのは、まず第一に彼等は触角みたいなものをふりながら、おたがいに話をしている様子である。しかも、話をしながら、いろいろと、こまかく身ぶりをするところを見ても、猿なんかよりも高等な智慧《ちえ》をもった動物のように見えた。
 全くふしぎな、気持のわるい生物である。
 その怪物は、くるくるうごく、大きな顔をもっていた。顔のまん中には、蜻蛉《とんぼ》の眼玉のようにたいへん大きな眼があった。そしてその下に、黄いろい嘴《くちばし》がつきでていた。頭の上は白く
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