大発見をした。
なるほど、化け鳥か化け甲虫かのその怪物は、ゴムでこしらえたむちのような手に、赤い缶を持っているのだった。見ているうちに、その怪物は日なたに出ると、並んで岩の上にこしをおろした。穴からはい出して日なたぼっこをはじめたようにみうけられた。
「おやおや、あれをごらんよ」
三郎が、さけんだ。
ふしぎなことを、その怪物ははじめた。手にもっていた缶詰を頭の上にのせるのであった。しばらくすると、その缶詰を頭からおろす。そして怪物は缶詰の中をのぞきこむのであった。そのときは、缶詰は、いつの間にか穴があいて中がからになっていた。怪物はその空缶を、ぽいと捨てた。そしてこんどは別の缶詰をひょいと頭の上にのせた。そして同じ動作がくりかえされたのであった。
「ふしぎ、ふしぎ」
「三ぶちゃん、あれは何をやっているのだろうね」
「あれは、缶詰をたべているのさ」
「缶詰をたべているって、頭で缶詰をたべるのかい。おかしいじゃないか。なぜ口でたべないで、頭でたべているのだろうか」
「さあ、そんなこと、ぼくにはわからないよ」
頭で缶詰をたべる怪物なんて、きいたことがない。そのくせその怪物は、くちばしのような形をした長い口吻《こうふん》をもっていた。
あまりふしぎな光景に、われをわすれて見とれていた風間三郎は、やがてのことに、はっとわれにかえり、
「クマちゃん。早くひきかえして、辻中佐たちにしらせようじゃないか」
「ああ、そうだったね。ぼくたちは、おもいがけなく斥候隊《せっこうたい》になっちまったね」
そういって二人は、いつしか中ごしになっていたこしをのばした。そして岩の上をとんで、うしろへ引きかえそうとした。
そのときだった。とつぜん、不幸なことが起った。
三郎のすぐうしろにいた木曾が、どうしたはずみか、するっと、岩かどから足をふみはずしたのであった。
「あっ、しまった!」
とさけんで、木曾は自分の身体をささえようとして、前にいた何にもしらない三郎の背中にしていたタンクにしがみついたのであった。空気があれば、いちはやく、そのけはいが、三郎にわかって、彼はうしろをふりむいて、応急処置ができたのであるが、なにしろ音というもののない世界だけに、三郎は木曾にしがみつかれるまで、何にも知らなかったのである。そして、
「あ、あぶない」
と気がついたときには、もうおそかった。三郎の
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