はずです。この上は、残りの×船を、甲板上の大砲で、撃って撃って撃ちまくろうという清川大尉の考えです。
 水面に出て見ると、何ということでしょう。海上にはもうねらうべき×艦×船の姿はありませんでした。よくもまア沈没したものです。
「各艦集合ッ」
 旗艦から、新たな命令がきました。
 第八潜水艦は、まるで疲を知らない元気で、旗艦のそばへ急ぎました。既に第十一号が着いていました。稍《やや》遅れて、第九号が急いでやって来ました。逃げる輸送船を追駈けていたのです。
 しかし、その残りの第十潜水艦は、一向に集ってくる気色がありません。旗艦からは改めて、無線電信だの、水中信号などを送ってみました。
「どうしても、答がない。第十号は、どうしたのだろう」
 悲しむべき想像――それがだんだんと、色も濃く、戦友の胸を染めてゆきました。
「とうとう、やられてしまったのだ」
「ああ勇敢だった第十潜水艦!」
 さきに、自分こそ、最期を迎えたと思ったことのある清川大尉は、不思議な運命で、今は僚友の身の上を心配する立場に置かれるようになりました。武運というのは、ここらのことでしょうか。
 潜水戦隊の戦友が、一様に悲痛
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