な面持になったそのときです。突如として連合艦隊司令長官から無線電信が入りました。
 ああ、わが連合艦隊からの無電!
「吾ガ連合艦隊ハ今ヤ×国艦隊ニ対シテ攻撃《コウゲキ》ヲ加エントシ、南洋○○群島ノ根拠地ヲ進発、真東ニ向ッテ航行中ナリ。×艦隊ハ既ニハワイパール[#「ハワイパール」に傍線]軍港ヲ出デテ、大挙西太平洋ニ向イタリ。太平洋大海戦ハ遂ニ開カレントシ、皇国ノ興廃ト東洋ノ平和ハ、正ニコノ一戦ニ懸レリ。貴第十三潜水戦隊ハ×国艦隊ノ航路ヲ追イ、機会ヲ求メテ×ノ主力戦隊ニ強襲スベシ。終」
 ああ、第十三潜水戦隊の新たな任務――これこそ待ちに待ったる最大の機会です。祖国をねらう憎むべき×の強力艦隊と一戦を交えることは帝国軍人の最も本懐とするところです。さア行こう光栄ある戦場へ! 皇国の存亡の懸けられたる太平洋へ!



底本:「海野十三全集 第3巻 深夜の市長」三一書房
   1988(昭和63)年6月30日第1版第1刷発行
初出:「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社
   1933(昭和8)年5月
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年11月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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