びく。胆《きも》を潰した護衛の巡洋艦は、サッと数条の探照灯を海面上に放って、ふり動かしました。しかしわが潜水艦は、あまり間近にいるのです。しかも商船隊の真唯中ですから、商船自身が邪魔になって一向先が見えません。きき目のないのは探照灯ばかりではありません。二十六門ずつもある夥《おびただ》しい大砲が一向役に立ちません。
 そこへまた、あちこちで魚雷が命中して、大爆発が起る。重油が燃え出す。積みこんだ火薬に火がついて爆発がさらに一段と激しくなる。そうなると二個師団の×国陸軍の兵士たちは、ポンポン空中高く跳ねとばされる。商船同士衝突する……。
 ×が日本の潜水艦を恐れて、五十隻もの商船隊が無理にお互の距離を縮めていたことは、大変な失敗だったのです。
 いや、もう滅茶苦茶の大勝利です。
 第八潜水艦は、奮戦また奮戦です。清川大尉は、汗と油とで、顔面がベトベトに光っています。乗組員たちは、あまりの奮闘に、腰から上は赤裸になり、その上に水兵帽をのせて、戦っています。
「魚雷撃方やめイ」
 艦長は号令をかけました。
「潜航中止、直《ただち》に浮き上れ」
 ここまでくれば、もう×の大部分はやっつけられた
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