中するのを見守っている間もなく、
「潜航! 二十メートル」
 艦長は号令しました。一旦魚雷を発射した上からは、どうせ×に気づかれるのは知れていますから、その攻撃をさけるために、すばやく海底へもぐりこんだのです。もう潜望鏡もすっかり水面下に没して、樽のような艦内からは、なんにも見えません。旗艦から発する連絡号令が、水中を伝わって、こっちの聴音機に感じるばかりです。――深度計の針が、気持よく廻り始めました。
 水面下九メートル、十メートル、十一メートル……。
 どどど……。
 鈍い、それでいて艦の壁にビリビリとこたえる異様な大音響がしました。すくなくとも五隻、多ければ十隻の×船の胴中に魚雷が当って爆発したのです。
「うッ、命中だッ」
「やったぞ。万歳」
 射手はその場に躍《おど》りあがりました。
 続いて次から次へと、遠くに又近くに、物凄い響です。海面上の商船隊の狼狽のありさまが手にとるようです。こうなれば、しめたもの、ついでに残る商船を、やっつけてしまわなければなりません。
 各艦は更に第二回の魚雷発射に移りました。
 どど、どど、どどーン。
 が、が、がーン。
 サイレンが海上に鳴りひ
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