いよいよ潜水戦隊は、海底深くもぐりこみました。
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「×ノ商船隊ハ、今ヤ、本戦隊ノ頭上ヲ通過セントス。カネテノ作戦ニ基キ、各艦ハ連絡ヲ失ウコトナク、一挙ニシテ、×船隊ヲ撃滅スベシ」
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この命令が旗艦から発せられて間もなく、×の商船隊の先頭にある巡洋艦は、本隊の真上に達しました。爆沈させるのは何でもないけれども、唯今の任務は、巡洋艦よりも商船にあるのです。忍耐! また忍耐!
やがて大商船隊は、機関の音も喧《やかま》しく、頭上にさしかかって来ました。
わが雷撃の腕の冴え
暗の太平洋に躍る火柱
「戦闘開始!」
旗艦からは、待ちに待った命令が下りました。
各艦の発射管という発射管には、もう魚雷がこめられ、今にも飛び出しそうな気勢を示しています。
「潜航止めイ。浮き上れ!」
大商船隊の真唯中に、浮き上れという号令です。何という大胆な命令でしょう。
「魚雷発射、――始めッ」
各艦の四門の発射管からは、サッと巨大な魚雷が飛び出しました。すぐ鼻の先というほど近い所にいる船をねらうのだから、外《はず》れっこはない。しかしそれが命
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