リ。警戒セヨ」
[#ここで字下げ終わり]
「うむ」
艦長は呻りました。
「いよいよ出あいますかな」
近づいた先任将校が嬉しそうにいいました。
この頃、×の商船隊は、わが潜水戦隊の旗艦が発見したように、パナマ運河を後にして、ハワイへ向け航行中でありました。日本潜水艦近くにありと知って、五隻からなる巡洋艦隊が厳重に守っています。夜に入ると、×の司令官は四十七隻から成る大商船隊をぐッと縮め、五列に並んだ商船と商船との左右の距離も非常に狭くなり、前後も出来るだけ寄りました。その前と後とに巡洋艦を一隻ずつおき、のこりの二艦は、いつも商船隊の周囲をまわりながら見張をするという用心ぶりです。
無理もありません。この商船隊が無事にハワイへ着くと着かぬとでは、×国艦隊の力が非常にちがってくるのですから。
「艦長、いよいよ本艦は本隊と一緒になることが出来ました。本艦は今や第五番艦として列内に加わりました」と副長が説明をいたしました。
とうとう、第八潜水艦は、本隊に帰りついたのです。水中聴音機が盛んに活躍して、旗艦との間に作戦上の打合わせが行われています。
「潜航三十メートル、一時機関停止ッ」
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