だし、それが、だんだんひろがっていくような気がした。
「あ、先生。わたしの体、ながされる。おお、大きな渦、先生、あぶない」
「なに、渦だ。うーむ。いよいよやってきたか」
 太刀川が、そうつぶやいた時、石少年の体が、まるで船にでものっているように、すーっと、目の前を流れた。
「せ、先生。渦がわたしをひっぱるよ。た、助けて!」
 石少年の細い腕が、高くあがったのを見た。
 しかしそれと同時に、太刀川の体も渦にのって流されはじめた。
「おお、石、しっかりしろ!」
 もう石少年の返事はない。そのうちに、ぴちぴちという生木をさくような、ぶきみな音が、渦のまん中と思われるあたりから聞えだし、彼の体は、くるくるとまわりだした。
「む、無念だ」
 と思った時、急に足が下にひっぱられるような気がした。必死にもがいたが、むだであった。太刀川の体は、いよいよはげしく、まるでこま[#「こま」に傍点]のように早くまわりだした。
「もう、だめか」
 彼は観念の眼をとじた、瞬間、頭の中をかすめるものがあった。
 原大佐の顔、
 重大使命は?
 海魔は?
 ケレンコ、リーロフは?
 やがて彼の気は、だんだん遠くなって
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