太平洋魔城
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)太刀川《たちかわ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)最前線に立つ将校|斥候《せっこう》を、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)艇と人とをひとのみ[#「ひとのみ」に傍点]にしようと、
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   怪しい空缶


 どういうものか、ちかごろしきりと太平洋上がさわがしい。あとからあとへと、いくつもの遭難事件が起るのであった。
 このことについて、誰よりもふかい注意をはらっているのは、わが軍令部の太平洋部長であるところの原大佐であった。
 その原大佐は、いましも軍令部の一室に、一人の元気な青年と、テーブルをかこんでいるところだった。
「おい太刀川《たちかわ》。この次々に起る太平洋上の遭難事件を、君たちはなんとみるか」
 力士のような大きな体、柿の実のようないい艶《つや》をもった頬、苅りこんだ短い髭、すこし禿げあがった前額《まえびたい》、やさしいながらきりりとしまった目鼻だち――と書いてくれば、原大佐がどんなに立派な海軍軍人だか、わかるであろう。
「さあ、――」
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