おりた。
(それ、とびかかれ!)
 五、六人のものが、ぱっとケレンコにとびついた。
「あ、こいつら、何をする!」
 ケレンコはさっと身を横にひらいて、ピストルの引金をひいた。
 カチリと音がしただけだ。しまったと、また引金をひいたが、これもカチリといっただけであった。三度めに引金をひこうとしたとき、おどりかかった艇員のために、またたくまに、その場におさえつけられてしまった。悪魔のごとく、おそれられている共産党太平洋委員長としては、あまりにあっけない捕らわれ方だった。
「さあどうだ。じたばたすると、首をしめちまうぞ」
 艇員たちは、急に鼻息があらくなった。
 ダン艇長は、この時ケレンコにむかい、
「どうです。ケレンコさん。何かいうことがありますかね。あの停電のくらがりで、あなたが懐中電灯を出そうとして、ピストルをおかれたのはお気の毒でした。そのすきに、太刀川さんのいいつけで、中国人少年の石福海が、弾をすっかり抜きとってしまったのですからな」
 ケレンコは、大ぜいの艇員におさえつけられながらも、胸をはって、
「そうだったか。よし、じゃ一たんは、おれの負としておこう。あの日本の青二才に、うま
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