四十九番と五十番とは誰と誰か」
 リーロフは艇員の手から名簿をひったくり、太い指さきで番号をたどった。
「うむ、四十九番は石福海。五十番は太刀川時夫。ははあ、そうか。あいつは日本人だったのか。ふふん、うまく逃げたつもりらしいが、なあに今にみろ。素裸《すはだか》にひきむいて、あらしの大海原へおっぽりだしてやるから」
 リーロフは、ゴリラのように歯をむいてつぶやいた。
 一方、ケレンコ委員長は、ダン艇長をひったてて、操縦室へのりこんだ。
 操縦室は、一面に計器がならんでいた。そしていろいろな操縦桿やハンドルがとりつけてあった。そこには五人の艇員が座席について、熱心に計器のうえを見ながら、操縦をしたりエンジンの運転状態を見たり、航路を記録したり、いそがしそうにたち働いていた。
 だが、ケレンコがはいっていったとき、五人の操縦員の顔は、いずれも紙のように白かった。彼等はすでに、艇内におこった大事件を知っていたのである。
「おい、皆。わがはいが、ただ今からダン艇長にかわって、この飛行艇の指揮をとることになった。わがはいの、いうことをきかない者は、たちどころに射殺する。いいかね、命のおしい奴は、命
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