をしているのだ。彼もまた、ケレンコとリーロフの勢いにのまれてしまったのであろうか。
いまや大飛行艇サウス・クリパー号は、おそるべき共産党員のため、すっかり占領されてしまったようである。
「おい、ダン先生」
ケレンコはいった。
「これで写真電送の器械も役にたたなくなったし、無電装置もこわれて、外との無電連絡は一さいだめになった。そこでこんどは、この艇の操縦室へ行く番となった。さあ案内しろ」
「私がか」
「そうだ。君は人質なんだ」
ダン艇長はいわれる通りにするほかはなかった。
艇内にある武器は、潜水将校リーロフがすっかりおさえてしまった。艇員たちが、ひそかにポケットにかくしもったピストルも、みなリーロフにまきあげられてしまったうえ、頤《あご》がはずれそうなほどつよく頬をぶんなぐられた。乗客たちも、一応しらべられたが、この方は、ほとんど武器を持っていなかった。
「おや、四十九番と五十番との席があいているじゃないか。ここの二人の客はどこへいった」
とつぜん大男のリーロフが、眼をむいた。
「さあ。存じませんねえ」
リーロフのお伴をしている艇員が、首をふった。
「じゃ、乗客名簿を出せ。
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