リーロフは、ソビエト連邦にその人ありと、外国にまで名のきこえた大技術者だ。ケレンコの方は、いまは太平洋委員長という役にはなっているが、彼は、現代の世界を根こそぎひっくりかえして共産主義の世界にし、あわよくばソ連の独裁官スターリンの地位をうばって、全世界を自分の手ににぎろうとしている、とさえいわれている人物だった。
悪魔の虜
「さあ、お客さんたちも、艇員どもも、これで様子は万事のみこめたろう。うわっはっはっ」
酔っぱらいのリキー――ではない潜水将校リーロフは、ピストル両手に、すっかり勝ちほこって、仁王さまのような顔をほころばせてあざ笑った。
「いいかね。これから、ケレンコとおれとが、ダン艇長にかわってこのサウス・クリパー号の指揮権を握ったんだぞ。不服のある奴は、遠慮なくおれの前へ出てこい」
大男のリーロフは、両手のピストルを、これ見よがしにふりまわしながら、人々をにらみつけた。
この恐しいけんまくの前に、誰一人あらわれる者もなかった。
それにしても、気がかりなのは、日東の熱血児太刀川時夫のことではないか。どうしたのか、彼は先ほどからちっとも姿を見せないのだ。一たい何
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