、まあお待ち。いいものを見せてあげよう」
 委員長ケレンコは落ちついたもので、ピストルをゆだんなく艇長の胸につきつけながら、左手で扉をどんどんとたたいておしあけた。
 と同時に、扉のかなたで「あっ」というおどろきのこえがした。大勢の艇員を向こうにまわして、にらみあっている一人の大男! その男が顔をくるっとダン艇長の方へまわしたのを見ると、おお、酔っぱらいの暴漢リキーであったではないか。
「あ、リキー」
「そうだ。リキーだよ。艇長さんは、よくおぼえていたね」
「あの酔っぱらいを忘れるやつがあるか」
「そうだ。誰も知っているよ。しかしリキーというのは、およそ彼に似あわしからぬ名だ。おい、ダン艇長さんとやら。あの手におえない男の本名を教えてやろうかね」
「え、なんだって」
「そうおどろかないでもよい。おれの片腕として有名な男。潜水将校リーロフという名を、きいたことがありはしないかね」
「うーむ、リーロフがあの男か!」
 さすがのダン艇長も、そのばけかたのうまさに、どぎもをぬかれたようだった。
 おそろしいおたずね者二人が、いよいよ仮面をぬいで、おもいがけないところからとびだしたのだ。潜水将校
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