いうと命がないぞ」
「なに、命がない? 馬鹿をいうな。艇長を殺すことは、貴様も一しょに死ぬことだぞ。艇長がいなくなって、このサウス・クリパー号が安全に飛行できると思うか。それに――」
「それにどうした」
「わが艇員は、貴様のような無法者をそのままにしておかないだろう。無電監視所が変事《へんじ》をききつけて、いまに救援隊がかけつけて来る」
「うふふふ。何をほざく。貴様のうしろを見ろ、無電装置が、ピストルの弾で、こわされているのに気がつかないのか。そんなことに、手ぬかりのあるケレンコ様か」
「え――」
 艇長がふりかえってみた。はたして無電装置の真空管が、むざんにも撃ちぬかれて、こわれていた。
(ああ、艇員たちは、一たい何をしているのだ。艇内が、エンジンの音でやかましいといっても、あのピストルの音が聞えないはずがない)
 そのとき、とつぜん扉の向こうにはげしい銃声がきこえた。
「あ、あれは――」
 艇長がおもわずさけんだ。
「ほう、やっているぞ。艇長さん。あれが耳にはいったかね」
 ケレンコ委員長は、にやりと笑って、艇長の方を見た。
「なんです。あの銃声?」
「うふ、そんなに知りたいのかね
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