「なに! じゃ貴様は、例の二人組の共産党員の片われ?」
「ほほう、いまになって、やっと気がついたのか。名のりばえもしないが、君がしきりに探していた共産党太平洋委員長のケレンコというのは、おれのことだ。忘れないように、よく顔をおぼえておくがいい」
 彼は、頭からすぽりと、かぶっていた頭巾《ずきん》をかなぐりすてた。
「あ、ケレンコ! うーん、貴様がそうだったのか!」
 ダン艇長は、ぶるぶると身ぶるいしながらも、ケレンコ委員長のむきだしの面構《つらがまえ》を見た。
 大きな高い鼻、太い口髭、とびだした眉、その下にぎろりと光る狼のような目!
 勝ちほこるケレンコ委員長のにくにくしいうす笑!


   仮面をぬいだ悪魔


「おい、立て!」
 ケレンコはどなった。
「聞えないのか。立てというのに」
 ケレンコは、ピストルを握りなおして艇長につきつけた。
 艇長は、いわれるままに、するほかはなかった。
「こんどは、両手をあげるんだ」
 ケレンコがつづけざまにいうので、
「貴様は、この艇長の自由をしばって、どうしようというのか」
「どうしようと、おれの勝手だ。文句をいわずに手をあげろ、四の五の
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