った。ピストルを握るのは、膏薬《こうやく》をはりつけた汚い手だった。指が引金にかかった。
とたんに、ドン! 轟然たる銃声!
おそわれた無電室
パーン!
ピストルの音が、びりっと無電室の壁をゆすぶった。
「あ!」
ダン艇長は、身をかわしつつ、うしろの扉をふりかえった。
扉がすこしばかり開いている。その間から、ぬっとピストルの銃口がでている。
――と、たてつづけに、パーン、パーン。
カーンと金属的な音がした。
と思ったら、いままでジイジイと鳴っていた写真電送の器械が、ぷつんと、とまってしまった。
(あ、やられた)
艇長が叫んだとき、
「うーむ!」
と、くるしそうな、うめきごえをあげて、今まで器械の前に、両肘をついていた通信士の体が、横にすーっとすべりだした。
「おお、撃たれたか!」
艇長が、おもわずその方へ走りよろうとしたとき、通信士の体はぐにゃりとなって、椅子もろとも、はげしい音をたてて、床にころがった。
つづいてパン、パン――
ぴゅーんと、艇長の頬をかすめて、弾は窓をつらぬき、外へとびだした。
「うー」
艇長は、うめいて、ぴたりと床にはらばった
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