二人の顔を送ってくる。すぐ受ける用意をしたまえ」
「はい」
通信士は、スイッチをひねって、写真電送のドラムを起動した。このドラムの中に、薬品をぬった紙が入っていて、向こうから送る電波によって、一枚の写真が焼きつけられるのだ。
「は、用意ができました」
「もしもし、本社ですか。用意ができました。写真をすぐに送ってください」
まもなくジイジイジイと、写真を焼きつけるための信号が入ってきた。もうあと十分たてば、写真は出来あがるのである。ケレンコの顔もリーロフの顔も、すっかり分かってしまうのだ。
なんというすばらしい文明の利器であろうか!
艇長はじめ通信係の一同は、ジイジイジイと廻るドラムの上を、またたきもせず、見つめている。やがてドラムの中に焼きあがる写真は、そもどんな顔をしているであろう。
一分、二分、三分――誰一人、声をだす者もない。
その時だった。
この無電室の入口の扉が、音もなくすーっと細目にあいた。室内の者は、誰も気がつかない。
その扉の間から、ぬーっと現われたものがある。
あ、ピストルの銃口だ!
ピストルの銃口は、しずかに室内の誰かを狙うものの如くぴたりととま
前へ
次へ
全194ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング