しかはっきり見えないんだよ」
「ほほう。そうか。そんなに悪い目をしていて、出入口を通る人をあてるなんて、おかしいじゃないか。はははは」
ところが、少年は至極まじめだった。
「ちがうよ。そんなことは、目でみなくたって、おれには、ちゃんと分かるんだよ」
「なに、目でみないでも分かるって、馬鹿なことをいうものでない。いいからもうだまっておいで」
太刀川は、石少年が透視術みたいなことをいうので、ちょっと気味が悪かった。だが、ケント老夫人のことを男だなんて、そんな当りの悪い透視術は、もうたくさんだとおもった。
だが、はたして彼の考えた如く、石少年の言葉はまちがっていたであろうか?
無電室では、四人の係員たちが、器械の前にすわりこんで、耳にかけた受話器の中に相手無電局の電波を、しきりに探しもとめている。
天候状態は、つづいて悪かった。
そこへダン艇長が、顔をこわばらして入ってきた。
「どうだ。まだ入らないか」
「マニラはやっと入りました。しかしニューヨークの本社が、さっき入りかけて、また聞えなくなってしまいました」
通信長が答えた。
「マニラの気象通報は、どうだった」
「あっちも、悪
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