もみあいがはじまっている。それは副司令リーロフと太刀川の一騎うちであった。
 あっと隊員たちが目をみはる前で、二人はビールだるのような胴中をぶっつけあいながら、上になり下になりしているのだ。
「このやろう!」
「このやろう!」
 どちらも、おなじことを、いいあっているので、隊員たちは、しばしあっけにとられながら、この妙なかけあい合戦を見まもっていたが、
「おい、ああしてとりくんでいるが、どっちがリーロフ大佐なのかね」
「いや、おれにも、どっちがどっちか、わからなくて困っているんだ」


   すばらしい知恵


 太刀川青年の作戦計画は、どうやら図にあたったようである。
 彼があやういせとぎわで、思いついたのは、リーロフの潜水服と彼の潜水服とが、まったく同じものであることであった。それを太刀川は、うまく利用してリーロフととっくみあいをはじめ、上になり下になりして、隊員たちの目をごまかしたのである。潜水兜の顔を正面からのぞけばいいようなものだが、そんな失礼なことをすると、あとでどんなお目玉をちょうだいするかわからない。ただ二人の言葉を気をつけてきけばわかりそうなものだが、これも、二人がお
前へ 次へ
全194ページ中128ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング